兵庫県西宮市の地域ラジオ局「さくらFM」が生産に携わる防災無線が聞ける市民向け「緊急告知ラジオ」が、品薄になるほどの人気だ。市民の防災意識の高まりや、市の手厚い補助制度が後押ししている。予想外の販売増を追い風に、さくらFMは開局以来の累積赤字を解消した。

 緊急告知ラジオ(高さ約10センチ、幅20センチ)は、ラジオ放送を聞いていたり電源を切っていたりしても、災害時に避難指示など防災無線と同じ情報が流れる。市の依頼を受けたさくらFMが製造業者とともに開発した。

 価格は8千円で2014年1月に発売。市は購入者に半額を補助していたが、手続きを省くため17年4月からは市が仕入れて補助後の価格で販売している。19年6月からは補助を拡充し、市民は税込み2200円で購入できる。

 17、18年度で計973台だった販売台数は、19年度に2895台と大きく増加。20年度は1370台で、今年度は市のハザードマップにラジオのチラシを折り込んだことも影響し、7月末ですでに3711台が売れたという。

 市は今年度2500台の販売を見込んでいたが、予想外の売れ行きに在庫も少なくなり、新たに500台を追加購入する予定だ。市の担当者は「全国で災害が頻発したこともあり、市民の防災意識が非常に高まっている」とみる。

 この事態に「生産が追いつかん」とうれしい悲鳴をあげているのがさくらFMの北村英夫社長(72)だ。一時は8900万円にのぼった累積赤字は、開局から20年以上を経てついに2020年度に解消された。

 さくらFMは、市や複数の事業者が株主となり1998年に開局。西宮市芦屋市の両市内を対象に、身近な情報や地域の話題、市政ニュースや緊急情報などを発信している。

 開局当初、経営は思うように上向かなかった。初期投資がかさんだうえにスポンサーもなかなかつかず、年々赤字を計上。2002年度には累積赤字が8900万円となり、債務超過寸前にまで陥った。

 危機感を強めた筆頭株主の市によるてこ入れや、合理化などで、03年度に黒字に転換。少しずつ累積赤字を減らしてきた。19、20年度には緊急告知ラジオの売り上げが大きく貢献した。北村社長は「累積赤字の解消にほっとしている。売れれば売れるほど情報が市民に伝わるし、会社の経営にもプラスになる」と喜ぶ。

 緊急告知ラジオは、西宮市役所本庁舎や市内の家電量販店などで購入できる。問い合わせは西宮市災害対策課(0798・35・3626)。芦屋市でも同機能で色違いの緊急告知ラジオが、一部の補助対象者を除き定価の8800円で販売されている。問い合わせは芦屋市防災安全課(0797・38・2093)。(松永和彦)